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2011/08/31

●エッセイ / あるバーテンダーの講釈――by サンディー・マッキントッシュ

あるバーテンダーの講釈――オスロのグランド・ホテルにて
サンディー・マッキントッシュ


「置き換える」(translation)というのはえらくやっかいなことです。
私らはアメリカ人のお客様がノルウェー語を話すこと期待しないので英語を学びます。
私らの言葉は相手にとって脅威になります。いわば、スリのようなものです。
たとえば、オスロは雪が何メートルも積もります。
クヌート・ハムスンは、「飢え」の主人公を雪の降り積もるクリスチャニアの道端で眠らせました。(1899年当時、オスロはクリスチャニアでした)
 ハムスンはその街路を知ってました。 しかしアメリカ人のロバート・ブライは、それを英語へ置き換えた、実にひどい、しかもオスロともクリスチャニアとも似つかない地図と共にやってきました。 ブライの地図で、ひとりの観光客が雪で死ぬところでしたよ!
クヌート・ハムスンはなかり浮き沈みはあったものの、我が国の躍進的な作家で、もっと尊敬されるにべき人です
ヘンリク・イブセンは、我が国の躍進的劇作家でした。ほとんど貧乏でしたが―――。
けれどもあなた方は彼の作品を英語へ置き換えたものをちゃんと理解していないでしょう。 
たとえば、「幽霊」の中でアーヴィング夫人は、英語では意味をなさない「銀行ジャーナル」をめくりながら、彼女の夫について話します。
ノルウェー人は「銀行ジャーナル」というのが「ポルノ」の意味だってわかってるんですよ。
イプセンは毎晩カフェで飲んで、食事をしていました。 彼の夕食はいつもオープン・サンドウィッチ、ビールとシュナップス。 それからしょっちゅう、pjolter――ノルウェイのウィスキーソーダを。
それで、彼は酔っていました。
ハムスンとイプセンは同時にここ、クリスチャニアに住んでいたことがあります。彼らは、貧乏と裕福とがそれぞれ別の意味を持つ状況の中、たった一度だけ会ったことがあります。
ある晩、イプセンはまとも座れないほど酔っていて、 ウェイターを罵倒したため、バーテンは彼を道端に「置き換え」ねばなりませんでした。 その時のハムスンはといえば、すっかり落ちぶれていて、カフェの外にある木の小屋に住んでました。 イプセンは彼の隣りに腰かけて、居眠りをはじめました。 それでハムスンは小屋から手を伸ばし、イブセンのポケットをかすめたんでしょう!
彼は自分をカフェに「置き換え」て、豪勢な夕食を注文したそうな!
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