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2012/07/12

斎場のバーにて by サンディー・マッキントッシュ



この斎場は荘厳で、真新しく、会議ホールのように
広い。見渡すかぎり棺と会葬者でひしめいている。あそこには
踊るハシディム、むこうには冷静なペロポネソスの人々。

あらゆる宗教、あらゆる階級が受け入れられる。私は
用がありここに来ている。母を乗せた車いすを押し、
暇そうな葬儀屋たちに「少しの間、見ていていただけませんか?」
と尋ねる。「バーで人に会わないといけないので」

「かしこまりました」


と彼ら。


″これから起きることについて私どもが知っていることを、あなたはご存知ない”、


葬儀屋然とした不気味な笑みを浮かべる彼らに調子を合わせる間もなく私は斎場のバーに向かった――。

――そこは誠実で睦まじい親族が集う、暖かく灯る懐かしい場所だった。無礼な戯れ言を飛ばす者はなく、皆心底くつろぎ敬意のこもった冗談を交わしている。
時に誰かの心休まる手がもう一人の肩に置かれる。

私は友達に会うためにここにきたが、時間が過ぎていき、彼女は全く現れない。

「君の友達は遅れているのか?やっぱりな?彼女は君の、もういない友達か?」


隣の紳士が言う。私は儀礼的に笑った。


「心配しなくていい」と彼。


「早かれ遅かれ彼女は来るよ。いつもそうだ」

しかし彼女は現れず、私は家に帰ることにした。バーの椅子を離れ床に立つと私はここにいる人達の背がずいぶん高いことに気づいた。私まで来た時より高くなっているようだ。

「悲しみのせいだ」隣の紳士が言う。


「嘆きがそうさせる。見せよう」


彼はそう言い、手でカーブを描くジェスチャーをする。

場面は一変し、 私たちはもう斎場のバーの愛想の良い人々ではなく、森の、背の高い松の木だ。 そして冬。 
空気は冷たく澄んでいる。 

私たちは一緒に立ってはいるが、それぞれは暗く、独りぼっちだ。



                                                                             Forty-Nine Guaranteed Ways to Escape Death より
ハシディムとは
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