最初そこは靴屋だった。
貧しい靴職人は
床で眠り、
客の靴底の張り替えは
厚紙だった。
*
そこが洋服屋だった時、
若い店主は
工夫を凝らし
美しくウィンドゥを飾った。
ある春、店頭につられた看板には
「結婚しました!」
マネキンたちは
花嫁姿でポーズ
手には彼女の
婚礼写真。
ある春、
看板には
「男の子です!」マネキンたちに
青いドレスを着せ
ぐるりにおもちゃを
めぐらせた。
ハロウィーンには、悪魔のお面を
ほどこし仮装した。
しかし12月、
彼女はマネキンたちを
クリスマスの装いで美しく飾ったが、
悪魔のお面を
取り忘れ――
通りをはさんだ向かいのカフェで
朝食をとり
眺めていた私たちの
気をもませた。
気をもませた。
しばらくすると、看板には
「離婚しました。閉店します」
彼女はウィンドゥをとりはずし、
裸のマネキンたちは
置き去りにされた。
がらんとした
ネオンの灯の下
こちらをにらんでいた。
冷たい雪。
*
現在、店は
一人の男が
ボタン屋を営んでいる。
よく動く意地悪そうな目。
堅苦しい着こなし、
ウィンドゥのカーテンから
さがる長い金属の鎖は
男の水玉模様のチョッキに
たれる時計の鎖のよう。
――ピーター・ブレアに捧ぐ
FORTY-NINE GURANTEED WAYS to ESCAPE DEATHより
Copyright ⓒ2011 by Quince Wharf (Translated)
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