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2013/01/07

一万ドル紙幣  by サンディー・マッキントッシュ


Forty-Nine Guaranteed Ways to Escape Death


ある女に一万ドル紙幣を
くずせないかとたずねられた。
「一万ドル札なんてくずせや
しませんよ」と言い財布を
開けると千ドル紙幣が十枚
入っている。
「運がいいですね。これが両替分です」と彼女に言う。
彼女はウィンクし
おおげさに微笑んだ。

しばらくすると
別の女が一万ドル紙幣を
くずせないかと私にたずねてきた。
「一万ドル札なんてくずせや
しませんよ」と彼女に言った。
「でもあなた今朝、両替していたのをみたわ」
「もう一度財布を開けてみてくださいません?」
彼女が訴えるので
財布を開けると、
一万ドルの両替分が入っている。
「今日は運がいいですね。これが両替分です」と彼女に言う。
ところが、数えてみると
最初の一万ドル紙幣が財布に入っていないことに
気がついた。最初の女から
もらわなかったのだ!

私は微笑んでウィンクしたままの
最初の女のところに戻った。
彼女の答えはこうだった。

「全部使っちゃったわ」

目には涙があふれている。
彼女が気の毒になり
二番目の一万ドル紙幣を
差し出そうと財布を開けた。
ところが財布は空っぽだ。
とっさに私は、
二番目の一万ドル紙幣を
財布に入れていなかったことに気がついた。

二番目の女が立っていた場所に急いで戻ると、
彼女は目に涙をためて
こう言った。

「全部使っちゃったわ」

私は彼女の手をなでた。
彼女の手を握って
立っているよりほかなかった。

結局のところ
もし一万ドル紙幣を
持っていたとて、
いいことはなかっただろうと
私は自分を慰めた。

誰も一万ドル紙幣の両替なんて
できはしないのだから。

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Forty-Nine Guaranteed ways to Escape Deathより



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